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「ウルビ、ソンコ、パラ、サヤイ」

ふくわらい (朝日文庫)

西 加奈子 / 朝日新聞出版




『ふくわらい』(西 加奈子)


(注)この本の作中には『ふくわらい』というタイトルからは予想もつかないキワドイ言葉アリ!

   フリースタイルダンジョンだったら、”コンプラ”マークだぁ~~~w
 

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4歳の頃、雑誌の付録についていた『福笑い』で遊んでから

『福笑い』がこの世で一番面白い遊びだと思った”鳴木戸定”(ナルキド サダ)。


父の栄蔵は紀行作家で、「定」という名は

作家のマルキ・ド・サドから名前をつけたらしい。(変人すぎる!)


定が5歳の時に母親の多恵が亡くなったので、栄蔵は定を様々な国に

連れていくようになった。


7歳になった定は、ある国のR族の慣習に従って

コミュニティの中で死んだ人を葬る儀式に立ち会うことになる。

(その経験がのちの定に大きな影響を与えるようになるのだが…)


定が12歳の時に栄蔵がこの世を去り、彼女は18歳まで親戚の家で面倒を見てもらう。


その後、2DKのマンションでひとり暮らしを始め、

25歳の今は出版社で文芸編集部の編集者をやっている。

しかし、”小暮しずく”(ぱっちりと大きな目と少女のような愛らしい唇をもつ1年後輩)や

無理難題を言ってくる作家の面々と、定の会話はどこか噛み合わない。


処女の裸が見たいという”水森康人”や、雨が止まないと書けないという”之賀さいこ”の要望に

定はどう対処するのか?


『福笑い』のように相手の顔から目や鼻を切り取って、

頭の中で自由自在に他人の顔に張り付けていく定。

定にとって人の顔の判断基準は美醜ではなく、「面白い」かそうでないかだ。

だから、定は週刊誌のコラムを書いている”守口廃尊”(モリグチ バイソン)

というプロレスラーの顔がとても気に入っている。

(無神経な話ばかりするのだけどね。)


「言葉」は福笑いのパーツのように文字のひとつひとつが小さな絵になっていて

組み合わせ次第で無限に広がっていくという喜び…

それが定の編集者としての心を占めているようだ。


そんな定がある日、白杖を持つ目の不自由な”武智次郎”と出会う。

イタリア人の父と日本人の母から生まれたエメラルドグリーンの目をした男。

(ただし、千葉で離婚した母と同居中の34歳。)

顔が見えない武智にとっては、優しくしてくれた定が「定のすべて」だ。


人の心の機微が分からないと言っていた定だったが、人と触れ合ううちに

定に変化が訪れる。

(それぞれのエピソードがとても温かく心地良いの!)



人間は顔を見て人を好きになる訳じゃないけれど、

例えば、その人の顔の配置が少しでもズレていたら

その人を好きになっていたかな、と考えてみる。


(大切なのは心だって言うけど、心の中はなかなか見えないもんね。)


自分でも分からない”痛み”を吐き出せた時から

本当の定の人生が始まるのだ。


心の痛みにはちゃんと向き合わないと、いつか自分が壊れちゃうよね。

私も誰かに心を許して思い切り泣いてみよーかな? (なーんてw)


弱い自分の事もちゃんと受け止めてくれる人に出会えたなら

それはすっごく幸福なことだと思う。



* あとね、もし映画化とかするなら、”定”役は安藤サクラさんかな。



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by ai-3sun | 2016-05-02 09:10 | books

『君の隣りに』(本多孝好)

君の隣に

本多 孝好 / 講談社




デリヘル嬢の生活の事を一度も考えたことはなかった。

(うん、多分それがフツーだっ!)


この本がそういうストーリーだったことも

ページを開くまで知らなかったし。

だから、読み始めてから面食らってしまった。

(あらー!そんなストーリーだったなんて)


だけど、私達はその種の仕事をしている人に対して

どんな意見を言えるのかな?


想像してみる…


デリヘルをしている女性の子供の事を

普通の生活をしている(と思っている)人々はどんな風に扱うんだろ…って。



小学4年生の子供を持つデリヘル嬢が

娘を置いて消えてしまった事件を発端に

彼女に関わる様々な人達の日常や過去が明らかにされていく物語。


本多さんの作品は、世の中のデリケートだったり汚かったりする部分も

”キヨラカ”に変換してしまう技を持っているんだよね。

だから、ここに書かれているようなお仕事は

ホントはこんなもんじゃない!!



…と言いながらも、最終章では思わず涙ぐんでしまった。

普通の中学生は、こんなに大人じゃないって分かってるんだけど。



世の中の私の知らない場所で生きている人たちの生活を考えてみる。

普通だと思っている生活も

誰もがそんなに簡単に手に入るわけじゃない。


生きていきたいわけじゃなく

生きていかなければならない…

そんな人たちもたくさんいる。(もしかしたら、私もその一人)


そういう人たちはどこに居場所を求めたらいいの?


「君の隣りに」居たいと言えるならいいな…


でも、「君」の存在が見つからない人間はどうしたらいい?


のろのろと人生を彷徨い、目指す場所もなく

そのうち、自分が”ニンゲン”だったことも忘れてしまうんだ。


自分をもっと大切にしよう。

そして、大切にしたい人を見つけようと思った。


自分の気持ちが届かなくても、

”君がいるこの世界に生きている” それだけで十分。



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by ai-3sun | 2016-04-04 23:17 | books

『舞台』(西 加奈子)

舞台

西 加奈子 / 講談社




この小説はニューヨークのガイドブック的な役割も果たし

葉太という主人公の”独り善がり”な「ひとり舞台」の話である。


それと同時に、作中に登場する小説『舞台』(小紋扇子)との関わり方が

sensitiveに描かれていてとても心憎い演出になっている。



29歳の葉太は、父親の遺産をつかってニューヨークへと旅に出る。

父親が残した『地球の歩き方 ニューヨーク』と

ずっと読みたいと思っていた小説『舞台』を持って。


『舞台』の作者の”小紋扇子”はひきこもりの作家で、数年に一度しか執筆しない。

実名も公表せず、顔も出さず、私小説を描く

引きこもりの作者の気持ちが葉太には痛いほどよくわかるのだ。

だから、その楽しみにしていた小説をセントラルパークのシープ・メドウで

どうしても読みたいと思って持って行ったのだった。


葉太は調子に乗ってはしゃぐ自分に対して、必要以上に警戒している。

「人間失格」を読んで、そこに登場する大庭葉蔵と自分は似ていると思っていた。

葉蔵は他者を恐れて生きていながら、それを完璧に隠し通せる”演技力”を持っており

葉太もイケメンで家が裕福であったという共通点もあって

「人間失格」に出てくる”竹一”的な存在に対しては、特に注意を惰らなかった。


ところが、その慎重な葉太がセントラルパークのシープ・メドウにたどり着いて

つい油断してしまったのだ。


「まさか」と思うような事態に直面して、葉太はへらへらと笑ってしまう。

”シープ・メドウすぎる”場所ではしゃぎ、浮かれ、我を忘れた馬鹿な自分が

情けなく恥ずかしく悲しいと思う。

それを隠すためにへらへらしている葉太。

『舞台』を読むために来た場所なのに、葉太にはもう本の内容が頭に入ってこない。

必要以上にヒトの目を気にしてしまう葉太。



葉太が6歳だった頃、彼は祖父の葬式で初めて亡霊を見た。

それは初めて葉太が意識をせず演じた”舞台”の後だった。


亡霊はニューヨークに行っても至る所に現れる。

ホテルの自分の部屋で、、、

2001年の同時多発テロのあったground zeroでも。


亡霊たちは葉太に何かを伝えたかったのだろうか?


死んだ小説家の父をしゃらくさくあざといと感じて嫌ってきた葉太。


葉太が自分を守るために演じてきた役は何だったのだろう?



そして、私達も知らず知らずのうちに何かを演じながら、

傷ついたり傷つけたりしているのだと思い知る。


葉太は”小紋扇子”の『舞台』を無事読むことができただろうか。


そしたら、そっと私に感想を聞かせて欲しい…。 



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by ai-3sun | 2016-03-18 23:14 | books

『北欧の挿絵とおとぎ話の世界』


北欧の挿絵とおとぎ話の世界

海野 弘 / パイインターナショナル




『北欧の挿絵とおとぎ話の世界』で紹介されていた挿絵画家のひとり

”カイ・ニールセン”に心惹かれた。


カイ・ニールセンは1886年デンマークのコペンハーゲンで生まれ、

イギリスのアーサー・ラッカム、フランスのエドマンド・デュラックと並んで

《挿絵の黄金時代》をつくったイラストレーター。


この頃のデンマークは、日本との交流が深く”ジャポニズム”(日本趣味)が

ニールセンの絵にも影を落としていたそうだ。

27歳の時にイギリスで挿絵画家としてデビューし、

”In Power and Crinoline”(「おしろいとスカート」)を出版。




ます、本書に出てきた「乙女と養母(イラスト1)」の挿絵について。


娘(乙女)が養母(魔女)に開けてはいけないと言われていた3つの部屋をのぞいたため、

【星】【月】【太陽】を逃がしてしまうシーン。


飛び去ってゆく月を見上げる白いドレスを着た乙女と

これからの運命をほのめかすかのように

乙女の左側に描かれている禁断の実を食べてしまうアダムとイブの姿が描かれている。


☆この挿絵の、”星がちりばめられた月”のファンタジックな美しさといったら…☆




「乙女と養母(イラスト2)」は

水を飲もうとした王子が、水面に映る美しい女の顔を見つけるシーン。

その美しい人とは、養母に呪われて口がきけなくなり、木の上に隠れていた乙女だった。




そして、代表作「太陽の東、西の月」(East of the Sun and West of the Moon、1914年)は

ノルウェーの民話集。


ニールセンは、北欧の青白い夜の空間の中に、幻想的な月や星をちりばめて

きらびやかな世界を作りだしている。


「太陽の東、西の月(イラスト1)」は

白くまに乗った乙女の姿が描かれているのだが、

白くまというのは王子の仮の姿。

月や星が、哀しいほどの淡い光でまわりを包み込み、

零れ落ちてくるかのような”白い光の葉”がとても美しい。


ニールセンの「太陽の東、西の月」には

エキゾチックな”波”や”細長い柳のような木”が多数描かれている。

特に「太陽の東、西の月(イラスト3)」の

”北風”が乗っている”波のしぶき”は日本の浮世絵そのもの。


「太陽の東、西の月(イラスト4)」では

細い橋(螺鈿細工のような模様)の上に馬に乗った乙女と王子がいるのだが、

後ろの赤い布(?)のようなモノの色が、やはり浮世絵を思わせる。

橋の下の方では、”波”と”岩”と”松の木に似た枝”が印象的だ。



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他にも素晴らしい挿絵画家の作品がたくさん掲載されていたのですが、

とりあえず、感想はここまでにしときますね^^


興味があった方は、是非ご覧ください!!
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by ai-3sun | 2016-02-15 23:10 | books

『100万分の1回のねこ』~佐野洋子さんへのトリビュートアンソロジー~

昨年の7月に刊行され、読みたいなぁと思いながら
忘れてしまっていた本の一冊がコレだった。



100万分の1回のねこ

谷川 俊太郎 / 講談社





佐野洋子さんの絵本『100万回生きたねこ』は200万部を超えるベストセラーだそうだ。

私も以前『100万回生きたねこ』を読んだことがあるのだが
どんな話だったのかあまり記憶にない。

猫好きとして面目ない感じでもある。


『100万分の1回のねこ』ができたそもそもの経緯というのは
広瀬弦さん(佐野洋子さんの息子さんであり、自らも作家)と谷川俊太郎さん、
編集者の刈谷政則さんの3人で飲んでいるときに考えた企画だそうだ。

それでいろいろな方々に依頼を出して
13人の人気作家による短編小説や詩の
”佐野洋子さん”へのトリビュートアンソロジーという形になったという。


それぞれの作品がとても味わい深い猫の話になっているのだけど
特に私が気に入ったのは
岩瀬成子さんの『竹』という物語だ。

岩瀬さんは児童文学を書く方なのでお話がわかり易く魅力にあふれている。

作者の紹介欄のページに書かれている
『100万回生きたねこ』に対するコメントがまず面白い。


100万回も平気で孤独を生きたのに、愛が猫を滅ぼしてしまった。
愛は恐ろしい。
うちの猫に「あんた、50回くらい生きたの」と訊いてみたが、知らんぷりしている。
案外60万回くらい生きているのかもしれない。


(笑)


『竹』に登場する”竹”というのは飼い猫の名前なのだが、
”竹”の飼い主の家族構成は、小学校6年生の菜々、姉の中学3年生の葉菜と、
(父親は単身赴任なので)母親の3人だ。

とにかくね、この子たちの母親がかなりの曲者なの!

母親は夜中までお酒を飲んだり煙草を吸ったりしているので朝は起きないし。

姉の葉菜が朝ご飯を作るようになったのは菜々が小3のときだった。
(姉は小6ってことね)

そんな家庭で猫がいなくなったところで
母親はまったく気にもとめていない。

一方姉は、”竹”がコワイおじさんにどこか遠くに捨てられて、帰って来られないのだと思う。

菜々も次第に、もう”竹”が戻ってこないのではないかと不安に感じ始め
”竹”を探しに出かけるのだが、、、


大学の先生をしている父親の方は
なぜかいつも菜々の携帯に電話をしてくる。

めったに家に帰ってこない父に猫のことを相談しても
「穏便にって。母さんに」と言うだけで、直接母と話はしない。

案外いろんな事情を抱えている家族のようだ。

何だろなぁ、、、
小学校6年生ごろの、初恋みたいにそわそわしたりする気持ちとかも
思い出しちゃうよね。


そして、”竹”はどうなったのか?…というと


……  読んでのお楽しみということで♪




猫ってそんなもんかも? と思いつつ… 
 

今度、近所のトラ猫に会ったら訊ねてみたいものだ

「キミの名前は?」って。



そしたら、「イッパイアッテナ。」って言われるかもしれないしね(笑) 楽しみだ。 

(ふふ、、、100万回生きたねこじゃないほう♪)
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by ai-3sun | 2016-02-01 23:32 | books

『晩年』の感想をちらほら

晩年 (角川文庫)

太宰 治 / KADOKAWA / 角川書店




『葉』の中に登場する
花売りの外国人の女の子の
「咲クヨウニ。咲クヨウニ。」

…というセリフが胸を突く。

ただ、それだけのことなのに…



安楽なくらしをしているときは、絶望の詩を作り、
ひしがれたくらしをしているときは、生のよろこびをつづる。



生活。

よい仕事をしたあとで
一杯のお茶をすする
お茶のあぶくに
きれいな私の顔が
いくつもいくつも
うつっているのさ

どうにか、なる。





『ビブリア古書堂の事件手帖』⑥巻にも引用されていた言葉。

叔母の言う。

「お前はきりょうがわるいから、愛嬌だけでもよくなさい。
 お前はからだが弱いから、心だけでもよくなさい。
 お前は嘘がうまいから、行いだけでもよくなさい。」

私はどれもよくできないだろうな。。
そんなに人に好かれなくてもいいからね


太宰はどんな気持ちで聞いていたんだろう




『ビブリア古書堂の事件手帖』②巻~栞子さんと奇妙な客人たち~

の第四話”太宰修『晩年』(砂子屋書房)より

栞子さん所有の稀覯本の表紙の見返しに書かれていたとされる一文

「自信モテ生キヨ 生キトシ生クルモノ
 スベテ コレ 罪ノコナレバ」

(太宰修の『晩年』の『道化の華』に登場する”大庭葉蔵”からのメールで物語が始まる)


死ぬことばかり考えていた作者の痛い程の思いが伝わってくる文だ。

すべての人が”罪ノコ”なら、誰に遠慮して生きることもないだろうが…



「ここを過ぎて悲しみの市(まち)」で始まる『道化の華』の主人公

”大庭葉蔵”という名の生まれるまで。

太宰でもあり、作者でもあり、登場人物たちの心情でもあり…
なるほど、若かりし日の私たちでもあって…


”青年たちはいつでも本気に議論をしない。お互いに相手の神経へふれまいふれまいと
 最大限の注意をしつつ、おのれの神経をも大切にかばっている。”


おどけて見せることで、真実を隠しているのだが

表面だけの人間関係は、すぐに終わりを告げるだろう

可哀想な人、可哀想な人。

キミも、私も。
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by ai-3sun | 2015-09-25 05:46 | books

『晩年』が読みたくなった

『太宰治「芥川賞 伏して懇願」』という記事が新聞に載っていた。
師弟関係にある佐藤春夫に宛てた手紙だという。

昭和10年、第一回芥川賞候補に『逆行』があげられたが次席となり、
第二回目の芥川賞に「伏して懇願した」願いもむなしく
その後も受賞することはなかった。

太宰は18歳の頃、泉鏡花、芥川龍之介の文学に傾倒していたため、
その年の7月に芥川が自殺したことに強い衝撃を受けたという。
芥川賞は本当に取りたかった”賞”だったのだろう。



最近芥川賞を受賞したお笑い芸人の又吉さんが、大好きだという太宰治。

(又吉さんの作品を読んでいないのでどうとは言えないけれど)
何だか、皮肉めいたものを感じてしまう。


けれども、本離れと言われている昨今において
又吉さんの功績は大きい。

又吉さんの『火花』を手に取った人はどれ程だったことか。

TV番組『アメトーク』での”読書芸人”の影響もあって
世間の人たちは、芸人がおススメしていた本を読みたいと思ったはずだ。
(読書芸人には又吉の他、オードリーの若林、光浦靖子さんなどがいた。)


=====どんなに作品が良くても、売れないとだなぁ…======


ところで、太宰の方に話は戻るが、
太宰は薬物中毒のため借金がかさみ、自分が持っていた『晩年』の本まで
古書店に売ってしまっていたという。

その話をもとに『ビブリア古書堂の事件手帖』⑥巻~栞子さんとめぐるさだめ~
で、太宰治の稀覯本を探すためのドラマが始まるのだが…

ビブリアシリーズは何度読み返しても面白い。

太宰治の作品はちょっと苦手意識があったけれど
『晩年』は読んでみよう。。(遅っ!!)
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by ai-3sun | 2015-09-08 23:08 | books

きっと映画化するんだろうなぁ、『キャプテンサンダーボルト』

『キャプテンサンダーボルト』(阿部和重・伊坂幸太郎)

キャプテンサンダーボルト

阿部 和重.伊坂幸太郎 / 文藝春秋





阿部さんと伊坂さんの共作という事で
若干の危惧があったのですが…(伊坂さんの持ち味を殺してしまうのではないかと)


とんでもない!!


大傑作です\(^o^)/




まるで”冒険活劇映画”(←古い!(笑))を観ているみたい!(だって、そうとしか表現できないだもん)


テンポの速い展開と良く練られたストーリー構成

そして、キャラクターの個性が際立っているので

最初のページからどんどん物語にのめり込んでいってしまいます!


もっと、もっと早く出逢うべきだった!この本に!!



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1973年式のポンティアック・ファイヤーバード・トランザムを乗り回している相葉時之。


マイケル・チミノ監督の映画『サンダーボルト』に出てくる車と同年型式のものだ。


(ここで本を読む前に映画『サンダーボルト』のあらすじを頭に入れておくのもいいかも☆)



相葉は予想を裏切らず

これでもかと次々とトラブルを起こし、同じ少年野球チームだった仲間たちを巻き込んでいく。



一方、かつて相葉の親友でもあった井ノ原悠にはアレルギーで悩む子供と心身症の妻がいる。

(井ノ原!絶対に首を突っ込むんじゃないぞーーーーー!と

 多分、読者の半分ぐらいの人たちは祈っていたと思うのだが、

 巻き込まれないとお話にならないからね〜( ̄^ ̄)ゞ仕方がない…)


*:._.:*^*:._.:*^*:._.:*^*:._.:*^*:._.:*^*:._.:*^*:._.:*^*:._.:*^*._.:*^*._.:



「ガイノイド脂肪に注目しろ!」 ←女性特有のセクシーな脂肪?

…から小説が始まり、楽天の田中将大投手の話もところどころに折り込み
映画の『サンダーボルト』(←本当にある)と
『雷神戦隊サンダーボルト』(←物語の中でのみ存在する)や
相葉と井ノ原の小学校時代の亡くなった同級生(委員長と呼ばれていた)の家族など
複雑に絡み合っているものを、きちんとリンクさせて楽しませてくれるところはさすがです!



小説家”阿部和重”と”伊坂幸太郎”が持てる技術をすべて注ぎ込み

「トリヴィアルな情報も入れて、その流れの中で伏線も埋め込む。」(←”本の話WEB”より)

と話していた通り、何気ないシーンがすべて意味のあるものだったというのは感動ものですね♥(*´艸`*)


”本の話WEB”には『ふたりで村上春樹さんとたたかう』というテーマでも話し合われていて

伊坂さんが「阿部さんなら村上春樹さんと対抗できるんじゃないか」と言ってしまうくらい

阿部さんの才能を買っていたというのです

(私はこの『キャプテンサンダーボルト』を読み、
 ふたりは、絶対”村上春樹さん”を超えた!と思ったけれどね)


そうして、史上最強な完全合作が実現するわけですが…


2011年8月には、男3人(阿部さん、伊坂さん、元編集者)で蔵王へ取材旅行に行き
玉こんにゃくを食べたそうなんです。。(何だか微笑ましい)

完全合作というのは、お互いに尊敬し、共感し、信頼し合っていないと出来ませんよね

そういう意味でも最強なコンビネーションだったわけです


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物語に戻りますが

私が好きなのは何といっても、犬の”ポンセ”です♪


えっ、何で犬なの?って


カーリーコーテッド・レトリーバーですよ!すごいじゃないですか
(黒っぽい巻き毛の大型犬、通常回収犬として活躍する犬種)


しかも、本当の名前がわかんないんですからねーーーーー(いい加減な性格の相葉ちゃんのせいで)

「バース」って呼んでも振り向かないから、多分「ポンセ」だったんじゃねー?的な…(笑)

(プロ野球の助っ人外人の名前だったらしい)

この辺のくだりや少年野球チームで使っていたサイン(ダブルスチールなど)が役立つところとか

野球好きの人には堪らないシーンも満載です ??


女子受けしそうなヒロイン「桃沢瞳」も魅力的ですよね

知的で積極的に事件に関わっていく女性!しかもキレイ♪

ヒーロー戦隊ものにはステキなヒロインも必要不可欠!


映画化されるなら誰が抜擢されるのかなーーー

あんまり変な女優にやって欲しくないなぁ



そうそう、主役二人の相葉時之と井ノ原悠は

どうしても《嵐》と《V6》を思い浮かべてしまうところだけど

それは違いますからねーー
 
そこだけは、絶対お願いしますよ!!!(断じて、相葉ちゃんとイノッチではない)


最近の映画は、物語に合った俳優や女優を選んでないでしょ

出来れば映画化して欲しくない作品だよね!

(ビブリアの二の舞いになるから剛力だけはやめてくれ!)

でも困ったことに、いかにも映像化したくなるような作品なのです




そう言えば、蔵王の河口周辺は最近まで噴火のレベルが上がっていたけれど

警報が解除されたらしいですね(おぉ、撮影できちゃうじゃないかっ)


『雷神戦隊サンダーボルト』を撮影したとされる蔵王の『御釜』。。

物語の鍵を握る場所だけに行ってみたいですよね…


子供のころのヒーロー戦隊ものシリーズなんかも、私、好きだったからなぁ~
(ピンク役は女子の間で奪い合いww)

主役はレッドだけど、軽いノリでレッドをサポートするブルーも人気あるよね~☆


だから、相葉ちゃんと井ノ原くんに例えるなら

やっぱりレッドは井ノ原くんで相葉ちゃんはブルーの”ライトフット”かなって思うけど!


でもって、文中での二人も「俺がレッドで、お前がブルーだ」という

かなり大人げないその辺のやり取りも面白くって!


「これは全部、ガキの頃の思い出のおかげだ。
 あの頃に見聞きして、味わったことのすべてが、今の俺たちを守ったんだ。」

…というセリフ通り

常識に惑わされないことと、

自分たちの手で培ってきた経験の力は、いざという時に役に立つのかもしれません


「常識を疑え!」「常識を疑え!」「常識を疑え!」


+++おまけ+++ 


読書中も読後も、たくさんググりました!

『サンダーボルト』の映画は本当にあるのか?とか
「ガイノイド脂肪」のこととか。(蔵王の御釜もね)

ついでに(っていうと失礼だけど)
阿部和重さんの作品を知らなかったので(無知でゴメンナサイm(__)m)調べたところ
『グランド・フィナーレ』(芥川賞受賞作品)
『ピストルズ』『インデイヴィジュアル・プロジェクション』などがあげられること。
今後、読んでみたいですね^^
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by ai-3sun | 2015-07-29 14:53 | books

『夜の国のクーパー』(伊坂幸太郎)

夜の国のクーパー (創元推理文庫)

伊坂 幸太郎 / 東京創元社




伊坂幸太郎さんはすごい小説家だ。


以前誰かがテレビで言っていたのだが、

「小説の良し悪しは、どれだけ悪役を上手く描けるか」だと。



まさにその通りだと思う。

伊坂さんの小説に登場する悪者は
感心するぐらい冷酷だ。

それでいて、

暴力シーンはうまくぼかしながらも

読み手の想像力を最大限に煽っていく。


私は被害者がどれほど酷い仕打ちをされているのか

頭の中で勝手に膨らませ

激怒したり大いに悲しんだりしてしまうのだ。


それにしても、、、

猫のトム君がとても魅力的である。


読んでいるだけで
猫が獲物を狙うときの表情や
ひげやしっぽの様子まで
全部思い浮かべることが出来てしまう。

…トム君がここにいて

今まさに私に喋りかけているような…♪


私はこの本を読みながら
猫と話が出来るということで
”村上春樹”さんの小説を思い起こしていたのだが、
どうやらそれは、全然関係がなかったみたい (~_~;))

(”あとがき”によると、作中の名前に関しては
 大江健三郎の『同時代ゲーム』の中の登場人物の名前になぞらえたらしい。)


そうなのか…

いつか機会があったら読んで見よう。



小説の後半の方では
物語の中の”冠人”が、”安倍総理”とダブってしまった。

.........あぁ、そうかも。

私達も疑ってかからないと
村人たちのように
騙され続けることになるかもしれないな。


そんなことを思った。
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by ai-3sun | 2015-06-20 22:41 | books

最大のミステリーとは?

最後のトリック (河出文庫)

深水 黎一郎 / 河出書房新社





『最後のトリック』~深水黎一郎作~


昨年、この本の事が新聞で紹介されていたので
翌日本屋さんに行って即買いしたのですが

やっと読み終わりました(^^;  遅すぎ~~


”読者が犯人”というミステリー史”最後のトリック”!!
…と聞いたなら

ミステリーファンとしては、かなり気になりますよね♪


解説で島田荘司さんが

結果として究極の「フーダニット」は、
冒頭に述べた「ホワットダニット」に近づいたように私は感じた。

(ちなみに冒頭に述べた「ホワットダニット」とは、エドガー・アラン・ポー作『モルグ街の殺人』のことを指している。)


…と話しているように


重要なのは、
どうして読者が犯人にならなければならないのか?ってことです


これは読者に対して、言いがかりをつけているようなものですから…



作者は、

何のために、どんな形で、
”私たち読者”を関わらせていこうと思っているのでしょう?



例えば、東野圭吾さんのような推理作家の場合、
”大学で心理学の講座を受けもっている博士が登場”となると
犯人ではなくても何かしらのヒントを与えてくれていたりします。


けれども、本書においては
そういうはっきりとしたヒントを期待するのはどうかと思います。


(かと言って、本題に関係ないと思われる話も
”読者が犯人”となってしまう理由を
”納得”させるためには必要不可欠な部分なのだという事もお忘れなく!)




とにかくこの本は、最後まで一気に読んでしまいましょう!



読後、

私は読者が犯人にされてしまった矛盾と、

他の方法で
なんとかして”その人”を救えなかったのではないか…というような

様々な苦い気持ちを味わうことになりました。



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ところで、知人に聞いた話ですが…


「推理小説は、犯人がわからないと安心して読めない。」
という友達がいるというのですが
本当にそんな人っていると思いますかー?


居るなら、

むしろ、その人の方が私にとっては最大のミステリーですけどw
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by ai-3sun | 2015-03-16 22:13 | books