『水鏡推理Ⅳ アノマリー』(松岡圭祐)

判断推理の才能に長けた”水鏡瑞希”25歳。


彼女は「研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォース」

に属している一般職事務官だ。

*「研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォース」とは平成25年8月、

 文部科学省内に設置され現在も実在するという。


省内において一般職は総合職(キャリア)と区別して扱われる。

瑞希は国家公務員の一般職試験には合格したが、偏差値の低い大学出身であるため

自分がこの仕事に向いているのかどうか疑問を持ちながら仕事をこなしている。

また、幼い頃には阪神・淡路大震災を経験しており

探偵事務所でバイトをした経験によって判断推理の能力を身につけた。


民間の気象予報会社の天気予報の誤りにより

”女子少年プロ登山プロジェクト”の少女4人が八甲田山で遭難し、何の関係もないはずの

浅村琉輝(”研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォース”の総合職)が

山で彼女達のSNSの写真に映りこんでいたという不思議な事件が起きた。

(女子少年: 少年院入院者の女子の呼び方)


NPO法人の代表者、天下りの官僚、省庁の役人たち。

どの人間も嘘をついているようで

瑞希は誰を信じたらいいのかわからない。


そして、女子少年達の親さえも…

親の愛情を知らない子ども達は非行に走り易いだろう。

間違った考えを押し付けるような親とは決別するべきだが

中学生がひとりで生きて行くことは難しい。


親は子どもの事をどんな時も大切に思っているのか?

愛情のない子育てをしている親に育てられると子どもは人生を狂わされてしまう。

だから、この小説ではきっぱりとダメ親との決別を促している。


ところで、小説のタイトルになっている”アノマリー”とは

法則や理論と比較し説明不可能な事象のこと。


前作の『水鏡推理Ⅲ パレイドリア・フェイス』(←こちらは地質学、地球磁気学)同様

難しい専門用語がたくさん飛び出す『アノマリー』(←こちらは気象学)だが、

読者の知識欲が掻き立てられ、脳の活性化間違いなし!の作品だ。


松岡圭祐さんの作品の素晴らしい所は、知識欲が満たされるだけじゃない。

水鏡瑞希に限らず、ヒロインが”女性”であることを決して武器にしない事だ。

どちらかと言うと落ちこぼれだったヒロイン達は、努力をし、経験を活かし、

機転を利かせて困難に立ち向かっていくのだ。


”水鏡”の意味は、「水がありのままに物の姿を映すように、物事をよく観察して真情を見抜き

人の模範となる」こと。


本来なら人の模範であるべきは”官僚”なのだが、彼らには道徳心のかけらもない。

(…と描かれている)

現実の世界も”正義”は”権力”にいつも捻じ曲げられているのだろうなぁ。。

せめて物語の中だけでも、正義が貫かれて欲しいと願う。


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by ai-3sun | 2017-03-31 23:33 | books